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海を編むひと
のんびりした ひとに 見えた。
時間をそこかしこに
置いてきぼりにしていそうなほど。
固い固い うちわ椰子の葉を編んで
日がな 帽子を つくっている。
買うひとがいなくても
気にすることなく 黙々と 淡々と。
野蛮な ひとに 見えた。
きらきら輝くとびうおを 夕闇の中で
さばいている。
波打ち際の 血に染まった作業台。
白砂にひかる 鱗の スパンコール。
憮然とした顔が
背びれの蛇腹の羽を
ひらいて見せてくれたときだけ ほころんだ。
夕潮にひかる 真珠の口もと。
岩の上の焼き網 香ばしい煙をたてる魚を
いきなりつかみ 海の中へ 駆けだしていく。
魚をじゅっと水にくぐらせ 頬張る。
ドレッドロックスから滴る 蒼いしずく。
肩の線の 頑なな かたち。
海を編むには 柔らかな手は やくただずだ。
皮膚をこがす熱さも 切るほどの厳しさも
すべて素手で つかみとれなくては。
ぶ厚いてのひらの中で
苦悩は うまれたての稚魚より たよりない。
いきずりの者は なんとでもいえばいい。
無知を蔑む者は 無垢に笑われるだけだ。
その荒々しいほどの たくましさ。
哀しいほどの 清らか。
いつか
届かんと。
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