おかえりボート

海の底でおきた波が 
珊瑚の花畑を 扇みたいに揺らしている。
デッキでおじけづく女客たち。
風船のように丸い男が、
自分を命の浮きにして一人ずつ海に下ろしていく。この美しさをわからせるのは
自分の使命だと言わんばかりに。

永遠に続く透明なフィルムを声が震わせる。
わかっちゃないやつらが 言うんだ。
君はそんな場所にいるべきじゃないなんて。

だが 今の境遇は
たまたま居合わせた
この船のようなものだと
考えられまいか。

いつか着くべき波止場
めぐりあうべき陸が
待っていてくれる。
両手をひろげ おかえりボートと。
そして海の底の営みは また
忘れられるのだ。
 
     in Pigeon Point, Tobago   


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