![]() |
| アンティーク通りに雪が | ||
ゆうべまた 新しい雪が 降りだした。 通りの 根雪のよごれを 消し去るように。 だが 黒ずんだよごれは 消えちゃいない。 ただ 塗りこめられただけだ。 春前にはまた 煤けた顔を だすだろう。 きみは 悦びいさみ おぼつかない足取り。 ブリーカー通りを 老いた猟犬のように歩く。 今は ウィンドウの中のキルトに じっと 見入っている。 切り刻み つながれた 鮮やかな布に 永遠を探す。 衰えた視力で 窓に冷えた鼻を やさしげにちかづけて。 この通りには もう何もみあたらない。 昔のように ぼくに歓喜の心を いだかせるものは何も。 だが 戻りたいとは思わない。覆うことは うそだと 思い込んでいた 馬鹿げたあの若さの疾風には。 戻っていって ヘイ 実はあれ 間違ってたよなんて いうほど かっこ悪いことはないものな。 狩人は狩をし 衝動を生きる。 ぼくたちは もう狩をする必要も なくなった。 それはそれで すばらしいこと。 |
今朝 世界は音を見失い 静寂に打ち沈んでいた。 不安になり きみの乾いた 唇に 指をあてた。 「私も真夜中に 同じことをしたわ」 目覚めたきみが まぶしげに 笑う。 子供じみた嬉しさが こみあげ 二人で 静かに新しい笑いを 哀しい笑いを 笑う。 それから いたわりの指先を 絡めあい 祈る。 こんなに 長いこと 祈りつづけてるのだ。 もう何を祈ってるのか ジーザスさえ 知りゃしないだろうな。 ここより遠い場所を 死と呼ぶのだろうか。 命に 古い新しいは あるものか。 迷いは ひとひらごと 先の空白に降りつもる。 ぼくたちも じきにつめたい雪の下 奥深く 埋ずもれていくだろう。 祈りながら ここからあとずさり 幸せに 消えていくだろう。 アンティーク通りに 雪が きみの ほそいほそい 銀の髪に 雪が 今 降りつもらんと。 |
|
Copyright © Tomoso Nonaka All Rights Reserved.